■−夢の中− 無限遅刻





「う〜〜〜・・・」


電気を消してふとんにくるまりどのくらい時間が経ったろうか。
目は冴え渡り一向に眠りにつくことができない。


眠れない。

明日の仕事の不安材料がものすごくて
 心配で心配で寝付けないのだ。
3日間の連休もそれが心配で落ち着きがなかったのだ。
こんなことは滅多にないからそれはそれはよっぽどのことだ。

できればもう仕事には行きたくない。

「眠れない時は羊さんの力を借りよう」

ボクは羊さんの数を数えてみることにした。

 

「羊が1匹、羊が2匹・・・」

 

「・・・羊が368匹、羊が369匹・・・」

 

ボクはうつらうつらとまどろんできた。
ゆっくりと意識が遠のいていった。

 

「うぅ〜ん・・・うぅ〜〜〜ん・・」

息苦しくなって目を開ける。

周りを見渡すと、数百の羊さんがボクを取り囲み押さえつけている。
中にはボクの顔でウ●コのついたお尻を拭いている羊さんもいる。

「ぐほっっ! 汚なっっ!! やめんかーーーおいーーーー!!」

なんということだろう。
眠れない人達の味方であるはずの羊さんまでもがこんな仕打ちを!!

数百の羊に体の自由を奪われたままボクは絶叫した。

「覚えてろよ、キサマら!
 起きたら全員バリカンで刈り込んでガリガリの体にしてやるからな!!」

ボクの顔でお尻を拭いてスッキリしたばっかりのオッサン羊は
 怒りに鼻を膨らませ、
 手にしていた一升瓶でボクの後頭部を殴った。

ボクは気を失った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピリピリピリピリピリ!!

時計が鳴っている・・・。
仕事に行く時間だ。
・・・でもあと5分だけ・・。

あと5分だけ寝かせて・・・・。

 

ハッと気がついて飛び起きた。

時計を見ると30分寝過ごしてしまっていた。
あわてて着替えて身支度もそこそこに外に飛び出す。
電車に飛び乗る。


目的の駅に降りたはずが、そこは聞いたこともないような駅の名前だった。
構内はボク一人。
しかもその駅には探せど探せど出口が見つからなかった。
時計を見ると始業時間10分前。
あせって周りを見渡す。
駅員がいたので呼び止めて聞いてみた。

「ここはどこですか? 出口はどこにあるんですか?」

駅員は目をパチクリさせながら答えた。

「何を言ってるんだ。ここはな・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピリピリピリピリピリ!!

時計が鳴っている・・・。
仕事に行く時間だ。
・・・でもあと5分だけ・・。

あと5分だけ寝かせて・・・・。

 

ハッと気がついて飛び起きた。
時計を見ると30分寝過ごしてしまっていた。

「お母さん! なんで起こしてくれんかったん!?」

なぜかそこには遠く離れた実家にいるはずの母がいて、朝食を作っているところだった。

「なんべんも起こしたがね。もう大人なんじゃけん一人で起きないかんがね」

ボクはあわてて飛び出した。
満員電車に飛び乗り、犬のように走るアンダーグラウンド。
パンを咥え飛び乗るワーキングマン。
気分だけはBOOWYだ。

今度は目的の駅にたどり着き地下鉄から地上に出れた。

・・・・アレ??

そこはやっぱり知らない場所だった。

市街地のはずがどこか郊外の工業地帯のようなところだ。
時計を見るとまたしても始業10分前。

ここはどこだろう?

なんでこんなところに?

あたりを見渡した。
さっき出くわした地下鉄の車掌が私服姿で歩いていた。

「おーーーい! 車掌さん!!」

ボクは車掌に向かって走った。
ボクはさっきこの車掌が言った“何を言ってるんだ。ここはな・・・”の続きが知りたくて叫んだ。

「“ここは・・・”って、どこだったのぉーーーー!?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピリピリピリピリピリ!!

時計が鳴っている・・・。
仕事に行く時間だ。
・・・でもあと5分だけ・・。

あと5分だけ寝かせて・・・・。

 

ハッと気がついて飛び起きた。
時計を見ると30分寝過ごしてしまっていた。

「お母さん! なんで起こしてくれんかったん!?」

「なんべんも起こしたがね。もう大人なんじゃけん一人で起きないかんがね」

「遅れそうじゃけん車で送ってくれんで?」

「なんぞね、お母さん忙しいんぞね」

「頼むけん車出してんや」

しょうがなしに母はボクを乗せて車を走らす。
仕事場の近くに来たので車を降りる。

・・・・アレ?

またしてもさっきと同じ場所だ。
平坦で建物もまばらな地に、遠くに並び立つ工場から灰色の煙が立ち上っていた。

時計を見た。
・・・20分前。

ここはどこだろう?

どう考えても遅刻だろうなぁ・・・。

電話するのイヤだな・・。

いっそ辞めちゃおうかな・・。

でも“派遣ってすぐ辞めちゃうから”なんて思われるの悔しいしな・・。

でも辞めたら遊べるぜ? 楽しいぜ?

いやいやいや、なに考えてんだ。

仕事しないと金も入んないんだぞ?

そんなことばっか考えてるからビンボすんだよ。

 

しばらく歩いて標識を探したがなにもなかった。
側の道路にはまばらに車は走ってはいるが、人は一人も歩いていない。
しばらく歩いていると携帯が鳴った。
見ると“バッテリー切れ”のメッセージが。

「あぁ、どうしよう!! 仕事場に電話できない!!」

今時間は何時だろう。
時計を見た。

時計は止まっていた。

「ああ、どうしよう!! もう時間もわからない!!」

 

ボクは走った。
がむしゃらに走った。
どっちに走ったらいいかわからないが当てずっぽうで走った。

明日がなくても走っているんだとしたら、
 暴走しているんだとしたら、
 ボクはさしずめブルース・スプリングスティーンといったとこだろうか。

ボクはがむしゃらに走った。
もう仕事なんかどうでもよくなった。
ボクは叫んだ。

「ああ、もうボクには何もわからない!!」



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