■バイトの思い出

大阪ではいろんなバイトをしてた時期があって、
織物工場、酒缶の製造、精密機械、窓清掃、喫茶店、うどん屋、レストラン、
バイク便(道を覚える前に辞めた)、日雇いとか、あんまり変わった職種もないがイロイロやった。
窓清掃というのはビルからぶら下がったりゴンドラに乗ったりしてモップで窓をきれいにしていく仕事で、
風の強い日はゴンドラが大揺れして高所恐怖症の私はすごく怖かった。
大手のビルなんか(丸紅とか)に行くとチェックがうるさくて
「ここの花瓶動いてるやないの」なんて怒られたりする。
この仕事のチーフはアントニオ猪木と高知の友人にそっくりだった。


酒缶の製造工場なんか、
ひたすらコンベア式に酒の缶(押すと熱燗になるやつ)を作っていく機械の
見張りをするだけの仕事なんですが、
たまに詰まると爆音がして缶がまるでポップコーンのようにはじけてなかなか笑えた。
コンビニに行くとまだこの酒缶が売っていて、これを見るたび大阪時代を思い出すのです。


工場で働いている人には変な人が多くて、
あるところなんか、いかにもビンボそうな貧相な顔した酒焼け顔のオッサンが
休憩時間にタバコ吸ってると横に来て、
「ワシこんなとこで働いてるけどほんまは社長なんやで。毎日新地で100万ほど使うとるし」
と、どうコメントしていいのか途方にくれることを言ったりした。
バブル全盛のころだったので、こういうところに働きに来るヤツは
高いバイト料だけが目的の遊び人も多くて、
そういうヤツらの会話ときたらやれスナックの女がどうした、やれロレックスが、
やれスープラがどうとか金もうけとモノと女の話ばかりで正直胸がムカついた。


谷町筋のうどん屋で働いてた時なんか、
そこのオーナーはうどん屋のくせにヤクザで
青龍刀が似合いそうな中国風の小柄で陽気でハゲのオヤジだった。
よく「このスーツええやろ」といって店員に見せびらかしに来たが全く似合ってなかった。

ある時私は社長に手招きされ、
何かと思うと自分の愛車ベンツのワックスがけを頼んできた。
「でも仕事ありますから」
「そないなんええねん」
私が横にいた先輩の顔を見て「どうしましょ?」というような指示を乞うと先輩は
「やったらええねん」
と目で合図を返す。
私はハゲのヤクザのベンツをワックスがけすることにした。

傷つけないように注意しながら磨いていると、1時間ほどしてから社長が戻ってきて
「たけし、まだかぁ」と言う。
「あともう少しです」
「お、そうや、ワックスは二度がけしてや」
そう言ってから立ち去り際に一言
「傷つけたら許さんで」
と不気味な笑顔で言った。

傷つけたらどうなるんだろう。
やっぱり大阪湾にコンクリで沈められるんだろうか・・・。
私はアスファルトの上に置いたウェスに砂が混じってないかドキドキしながら注意すると
イヤ〜な汗をかきながらひたすらハゲのヤクザのベンツを磨いた。
もし大阪湾に沈められたら親が泣くからだ。

無事にワックスがけを終わり社長にチェックしてもらうと
「おう、ようやった」
と言って私の手に5000円握らせた。
「これ、税金かかんないですよね?」
と私が冗談言うと
「そんなもんマトモに払わんでええねん」
と言って社長は陽気にガハハと笑った。
ハゲだが気のいいオヤジだった。

「おまえもがんばってこんなの(ベンツ)乗れるようにならなあかんで」と言った。
「そんなの悪いことしないと無理ですよ」とはとても言えなかった。
ハゲのヤクザは怪しいグラサンかけると、
まだ夕方6時だというのに新地の飲屋街にベンツを走らせた。


このうどん屋で先輩に初めてにしんそばというものを教えてもらいすっかりハマり、
それ以来しばらくはこればっかり食べてた。
ここのうどんとそばはマジにうまかった。



この頃はバイクに狂っており、バイト代の大半は全てバイクの改造費やパーツ代に消えた。
そのマシンはスズキのGS-250FWという、排気音はかっこいいのにすばらしく遅いマシンだった。
4ストローク水冷4気筒。250なのに異様に重たくとにかく加速しない。
キャブイジったり軽量化しても原付にさえダッシュで負けるほどショボかった。

その次に買ったのが今度は極端に速いマシンで、当時出たばかりのRG-Vガンマ。
すさまじく速いのですっかり虜になり毎週土曜日に阪奈道路に繰り出しては走り回ってた。
でもよくコケた。
バイト代はこいつの修理代とスピード違反の罰金に全て飛んでいった。
阪奈道路の一番の見せ場36コーナーと呼ばれる最終コーナーは
時速120kmでかっ飛ばしていく高速コーナー。
でもビビリの私は80kmが限界だった。
いいマシン乗ってるのにコーナリングはスットコ。

コーナーで80越えるともう別世界で、私の得意はゼロヨンとシグナルGPだった。

後に違反通知が全部親元に送付されてしまい、
そのあまりの違反と免停の数の多さに母は怒り、私はこっぴどく叱られた。

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