■お毛々シスターズ♯5 脇毛地区

脇毛地帯。

あそこに行って今だ帰ってきたやつはいない。
一帯がうっそうとした密林で、治安も悪いため乳毛地区の私達は行く用事さえないのだが。
あの地区も20代まではおとなしいものだったが
30を越えた今では“持ち主”の私でさえ手に負えない存在になっている。
1年中湿気の多い密林地帯で、のどかな乳毛地区とは比べ物にならない危険な場所だ。
一般に“オヤジ臭”と呼ばれるすえた臭いを多く発する場所であり
悪辣な青龍会の根城となっているところだ。
彼らは秘密裏に根城を拡大植毛しており、知らない間に私の毛が増えているのはヤツらの仕業だ。
親の私をないがしろにしているヤツらはもはや手に負えない。
そんな場所に巣くっている悪の巣窟が青龍会だ。
マサヒコは以前より青龍会と裏でつきあいがあったようだ。
ケンジ達を拉致したのは青龍会のチンピラ達だ。

「アイツを使いましょう」

古井はオレンジ色したレンズのメガネを二本の指でスッと持ち上げながら言った。
専門学校で電気工学の勉強をしたものの
なぜか初めて就いた仕事は都会のある和菓子の製造業であった。
別に和菓子の職人になるつもりでもなし、彼自身甘いものは嫌いだった。
その後バーテン、チラシ配り、土方、空気清浄機の訪問販売と
仕事も転々とし、生活も無軌道を極めたらしいが
田舎の彼女を腹ましてしまい結局田舎の乳毛地区に帰ってきた。
そんな彼はのどかなこの風景が好きだという。女の子達もスレていない。
「田舎も悪くないもんですよ」と彼はよく言う。
古井は私とは普段あまり付き合いはないが、こういった問題には自分からその場に現れ
問題を解決しようと努力してくれるような男だ。
以前彼が行きたいというのでバス釣りに連れて行ったが
私の自慢のベイトタックルを誤って湖の底に沈めてしまったので
それ以来一緒に釣りに行くことはない。

「アイツを使いましょう」

「ひょっとして“探索人”のこと言ってるのか?」
私はお目々をかっぴらいて古井を見た。
古井は大きくうなずきながら言う。
「そうです。ヤツが適任です」
「ダメだ! あいつはリスクが多すぎる。危険だ!!」
「しかしヤツを失ったところで問題ない。それに確実にマサヒコのヤツを仕留めるでしょう。
ヤツは血を見るのが大好きなヤツです」
「・・しかしケンジは救い出さないと思うぞ」
「そう。そこで誰かを同行させ、その者にケンジを救出させます。いわば探索人は囮です」
「なるほど。よし、オレが行こう」
私は即座に答えた。
「バカな!! あんな危険な所に!! 私は許可できません!!」
「オレが行けば探索人もムチャはしないだろう。それに−」

私は少し間を置いて言った。

「誰に何と言われても行くんだよ、オレは」
  待ってろよ、ケンジ。必ず助け出してやる。
   親であるこのオレがっっ!!

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